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東京地方裁判所 平成11年(ワ)22720号 判決

原告 A

被告 国

右代表者法務大臣 保岡興治

右指定代理人 日景聡

同 宮崎芳久

主文

一  原告の別紙請求の趣旨第一項にかかる訴えを却下する。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一請求及び答弁

一  原告の請求

別紙請求の趣旨第一項ないし第三項のとおり

二  被告の答弁

1  本案前の答弁

(一) 原告の別紙請求の趣旨第一項にかかる訴えを却下する。

(二) 右訴えについて生じた訴訟費用は原告の負担とする。

2  請求の趣旨に対する答弁

(一) 原告の請求をいずれも棄却する。

(二) 訴訟費用は原告の負担とする。

第二事案の概要

一  本件は、原告が被告に対し、原告と訴外株式会社X産業間の東京高等裁判所平成四年(ネ)第三二〇三号、第三六一三号株主確認請求控訴事件(以下、両事件を併せて「基本事件」という。)の本人尋問調書の一部に法廷における現実の答えと異なる記載がなされているとして、同調書上の記載を書き改めることを求めるとともに(以下「本件調書訂正請求」という。)、これにより財産的損害と精神的損害が続いているとして、金一〇〇万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで年五分の割合による金員の支払(以下「本件金員支払請求」という。)を求める事案である。

二  争いのない事実等

1  東京高等裁判所(第一〇民事部)に係属中であった基本事件の第六回口頭弁論期日(平成六年九月二〇日実施)において、訴外株式会社X産業代表者本人Bに対する尋問が行われた。

2  右尋問にかかる本人調書(乙第一号証。以下「本件本人調書」という。)の三丁表八行目以下の第一一項には、「私の出したもので、もし嘘が発覚したら全部好きなようにして良いから、全部負けで良いから、逆にお前の方で嘘がはっきりして、ぼろが出たら私に会社を全部寄越すとかしますか。」との問いに対して、訴外株式会社X産業の代表者の「そんな馬鹿なことをする者がどこにいますか。」と答えた旨の記載(以下「本件問答部分」という。)がある。

三  争点

1  本件調書訂正請求の適法性及びその当否

2  本件金員支払請求権の存否

第三争点に対する判断

一  争点1について

本件調書訂正請求は、裁判所書記官が作成した本件本人調書中の本件問答部分が現実に法廷で行われた答弁と異なる記載となっているとして、別訴である本訴において、原告が被告に対し、右記載部分を書き改めることを求めるものである。

ところで、民事訴訟手続において裁判所書記官作成の調書の記載内容について不服のある当事者等がその訂正ないし更正を求めるための手続としては、調書の記載に対する異議の制度(民事訴訟法一六〇条二項)が認められており、調書中に法廷における供述と異なる内容の記載があると主張する当事者は、同手続によってその是正を図る途が確保されている。

明文上、調書の記載に異を唱える当事者が調書の訂正等を求める手段は右が唯一のものであり、当該訴訟手続と離れ、別訴を提起することにより、当事者等が受訴判所以外の裁判所に対して、同裁判所が調書の正確性を判断し、調書の記載の訂正等を命ずることを求めることは、そもそも法が予定していないものと解すべきである。

そうすると、本件調書訂正請求は不適法なものとして却下を免れないものというほかない。

二  争点2について

1  原告は被告に対し、基本事件の担当裁判官と裁判所書記官が共謀して、現実の法廷供述と異なる本件問答部分を記載した本件本人調書を作成して配布しながら、原告が記載の訂正を求めてもこれに応じないために、財産的損害と精神的損害が続いているとして、国家賠償法一条一項等に基づき、本件金員支払請求をする。

2  ところで、本件に関し、原告は基本事件において異議の申立てを通じて本件本人調書の訂正を求める以外に、別訴を提起する方法によりその訂正等を求めることができないものと解すべきことは前述のとおりであるが、原告の本件金員支払請求は、損害の賠償を求めることにより、別訴である本訴を通じて受訴裁判所とは異なる当裁判所に対し、本件本人調書の記載内容の正確性の判断を求めるものに他ならない。そして、仮に、本件調書記載中に法廷における現実の問答と異なる記載があり、これが民事訴訟手続上、違法であるとの評価がされることがあったとしても、その結果としては、手続的に調書の訂正等が認められるに過ぎず、裁判官等が違法又は不当な目的をもってなしたなどの特別な理由が存在するような極めて例外的な場合を除き、これが手続上の瑕疵を超えて、国家賠償法一条一項にいう違法行為に該当するものということはできないと解すべきである。

3  そこで、これを本件についてみるに、原告の主張する財産的損害及び精神的損害はその内容自体が甚だしく不明確であるうえ、右のような特別な事情についても、単に担当裁判官と書記官が「共謀」したと主張するにとどまり、これを基礎付ける事実関係を全く主張していない。

また、原告が問題とする本件問答部分である「私の出したもので、もし嘘が発覚したら全部好きなようにして良いから、全部負けで良いから、逆にお前の方で嘘がはっきりして、ぼろが出たら私に会社を全部寄越すとかしますか。」との質問に対して、現実には訴外会社代表者が「ウーン ン いいよ」と答えたにもかかわらず、担当裁判官及び担当書記官が殊更に違法又は不当な目的をもち、「共謀」の上、真実を敢えて曲げ、右回答部分について「そんな馬鹿なことをする者がどこにいますか。」との虚偽の記載をするなどということ自体、経験則上、著しく考え難いものであるうえ、そもそも、原告は、右「共謀」等の事実についての立証計画を示さないのみならず、提出すべき証拠はない旨陳述しているのである。

4  そこで以上によれば、原告の主張する財産的損害あるいは精神的損害の具体的な内容、これを基礎付ける事実関係あるいは基本事件の担当裁判官及び書記官の行為と右各損害との間の因果関係等についての釈明をし、あるいは原告に対して追加立証の機会を与えるまでもなく、本件金員支払請求に理由がないことは明らかである。

三  ところで、当裁判所が本件判決言渡期日を平成一二年七月二七日午後二時とする旨の期日指定をしたところ、これに対して原告は、同月八日付の「判決言渡期日指定に対しての異議申立書」と題する東京高等裁判所宛の書面を当裁判所に送付した。

原告の右申立書は、本件担当裁判官に対する忌避申立事件が終結していない時点で、本件判決言渡期日を指定したことについて不服を申し立てるものであるが、これが右期日指定に対して抗告を申し立てる趣旨のものであるのか、右期日についての変更を申し立てる趣旨のものであるのか、あるいはその他の趣旨のものであるのかは明確でないが、原告による前記忌避申立ては平成一二年三月一五日に却下され、これに対する即時抗告も同年六月一二日に棄却されて、右忌避の申立てがこれにより確定することとなることは本件記録上明らかなところであり、また、当裁判所の指定した判決言渡期日を変更すべき顕著な事由があるとは認められないから、当裁判所は、原告の右異議申立てにかかわらず、同年七月二七日の第二回口頭弁論期日において、本判決の言渡をすることとしたものである。

(裁判官 高宮健二)

別紙<省略>

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